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6月24日(月)全校朝礼でのお話 ―「生きた知識」とは新しいことを学ぶことができる知識のことです

24.07.08

現代は、あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来の予測が困難な状況にあるといわれています。「何事も今まで通り」という考え方では、新たな社会の動きに対応できません。状況を的確に判断し、柔軟に対応していくことが求められます。そうした思いも込めて、6月24日(月)の全校朝礼では「生きた知識」についてお話をしました。その一部については『附小だより』2024年7月号に掲載しましたが、ここに再掲いたします。 

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皆さん、おはようございます。 

「あじさい読書週間」が終わりましたが、この間に皆さんはどのような本を読みましたか。校長先生は今井むつみさんが書かれた『学びとは何か―〈探究人〉になるために』という本を読みました。そこで学んだことの一部を紹介しようと思います。 

皆さんは「行間を読む」という言葉を聞いたことがありますか。行間というのは文章と文章の間のことで、文字が書かれていないところのことです。皆さんが文章を読み、意味を理解することができるのは、この文字の書かれていない行間という隙間を自分自身で補いながら読んでいるからです。こうした行間という隙間を補うために使う常識的な知識のことを心理学では「スキーマschema」と呼んでいるそうです。ダジャレみたいですが、本当です。 

例えば次のような会話の文章があったとしたら、皆さんはこの会話は何曜日の何時頃のものだと思いますか。 

 

母   :「早くお風呂にはいりなさい。もうすぐご飯にするから」 

子ども:「ええ、ちょっと待って、もうすぐ『ちびまる子ちゃん』が始まるから見たい」 

母   :「そんなこと言っていいたら、ごはんが遅くなるでしょ。さっさとお風呂に入りなさい」 

 

そうですね、日曜日の夕方6時前の会話だと思いますね。 

また、別の会話文です。二人の児童が体育の時間でつぶやいていたものです。 

 

子どもA:「おなかすいたね」 

子どもB:「そうだね、でもこの体育が終われば給食だね」 

 

これだけの会話ですが、皆さんはこの会話からこの体育は何時間目の授業だったと思いますか。 

そうですね、4時間目だと思いますね。それは本校では4時間目が終わると給食の時間になるということを皆さんが知っているからです。先ほどの「ちびまる子ちゃん」の放送が始まるのは日曜日の午後6時からだということを経験的に知っているからですね。 

このように会話では直接述べられていないことであっても、その行間の意味を自分自身で補いながら理解しているということがわかります。そうした知識(スキーマ)があるからです。 

 

先週の木曜日、校長先生が体育館の前を通った時、たくさんの児童が腹ばいになっているのを見ました。「熱中症になって倒れているのかな、大変だ」と思って体育館に入っていったのですが、そこでは3年生の理科の実験が行われていたのでした。それは帆を張った車に扇風機で風を当てて、どれだけ走るのかという実験でした。この実験は去年もおととしも行われたとのことですので、4年生や5年生、6年生の皆さんでしたら「ああ、あの実験か、やったことがあるなあ」と思い出していることでしょう。その一方でまだこの実験をしたことのない1年生や2年生にとっては何のことかわからないことだと思います。 

このように校長先生が話していることを理解するため、皆さんはすでに持っているさまざまなスキーマを使い、瞬時に行間を補いながら話を聞いているわけです。 

 

さて、知識には「生きた知識」と「死んだ知識」があるといわれています。  

「生きた知識」とは必要なときにすぐ取り出して使うことができ、それを使ってどんどん新しいことを学ぶことができる知識のことです。体で覚えた知識、臨機応変に使える知識ともいえます。 

それに対して「死んだ知識」は頭で知っているだけの知識で、使えない知識のことです。 

校長先生が読んだ本には次のようなことが書かれていました。 

 

人は、何か新しいことを学ぼうとするときには必ず、すでに持っている知識を使う。知識が使えない状況では理解が難しく、したがって記憶もできない。つまり、学習ができない、という事態に陥ってしまう。言い換えれば、すでに持っている知識が新しいことの学習に大きな役割を果たしているのである。(今井:23ページ) 

 

「生きた知識」とは、単に事実を知っているという知識ではありません。必要なときにすぐ取り出して使うことができ、それを使ってどんどん新しいことを学ぶことができる知識のことです。 

ではどうすればそうした「生きた知識」を身に付けることができるのでしょうか、これからも一緒に考えていくことにしましょう。 

 

これで校長先生のお話を終わります。 

 

参考文献:今井むつみ『学びとは何か―〈探究人〉になるために』(岩波新書1596、2016年) 

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ではまた                                                                                                                                                       坂口満宏 

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