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『附小だより』10月号の「巻頭言」に「自由研究のヒントは身のまわりにたくさんあります」と題した文章を掲載し、「探究」することの糸口を述べてみました。その一部を紹介します。
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2学期最初(9月9日)の全校朝礼で校長先生は、皆さんが夏休みに取り組んだ「自由研究」の意義についてお話ししました。そして「毎日が自由研究です。探究する力が身につくこと、まちがいありません」とお話ししました。自由研究(探究)のテーマやヒントは身の廻りにたくさんあります。今日はその一つを紹介したいと思います。
皆さん、毎週日曜日のよる6時30分~7時に放送されているアニメといったら何を思い浮かべますか…。そうです、「サザエさん」ですね。「サザエさん」のテレビ放送は1969年(昭和44年)10月5日に始まりましたので、この10月に55周年を迎えます。
ではサザエさんのエンディングで次週の予告ととも楽しみにしているものといえば、何ですか。
サザエさんとのじゃんけんですよね。「じゃんけんぽん! ウフフフフ」という場面です。実は、この次週予告のじゃんけん、放送開始当初からあったのではなく、今から33年前の1991年(平成3年)10月20日の放送から始まったものでした(「サザエさん公式ホームページ」サザエさん 50年の歴史)。
それまではどういうシーンだったのかというと、サザエさんがクッキーを放り投げて口でキャッチするのですが、クッキーをのどに詰まらせて「ンガググ」とうめくというものでした。サザエさんといえばお転婆で、愛嬌がありますので、そうした個性を描いていた場面だったと思います。ところがこれに対して食べ物を放り投げて口でキャッチするのははしたない、子どもたちがまねをしてクッキーをのどに詰まらせると大変だ、というクレームが放送局に入ったのでしょう。そのため制作スタッフはエンディングシーンを描き直すこととし、今に至る「じゃんけんぽん! ウフフフフ」が始まったわけです。
では皆さん、サザエさんがグー、チョキ、パーの中から何を出すのか、どうやって決めていると思いますか。『アニメ サザエさん公式大図鑑 サザエでございま~す』(扶桑社、2011年)によれば、制作スタッフがサザエさんの気持ちになって毎週のじゃんけんで何を出そうかと考えているのだそうです。スタッフも視聴者との駆け引きを楽しみにして、面白がっているようです。
この面白がるという精神は『アニメ サザエさん公式大図鑑』にも活かされています。図鑑のページの隅にはページ番号が書かれていますが、その数字の上にグー、チョキ、パーいずれかのマークが描かれています。そしてページをめくる前に自分の頭の中で次に何を出そうかと思い浮かべてもらい、決まったところでページをめくる。そうするとページをめくるたびにじゃんけんが楽しめるというわけです。工夫が凝らされていますね。ここでもサザエさんの図鑑作りを面白がっている制作スタッフの姿が目に浮かびます。
さて、サザエさんの「次週予告じゃんけんぽん!」が始まるとそれを面白がり、「今度こそサザエさんに勝つぞ!」と勇んでテレビに向かってじゃんけんする視聴者が何万人にも上ってきました。皆さんもその一人ではありませんか。
するとこの「次週予告じゃんけんぽん!」の結果を徹底的に記録し分析するぞという人たちが現れてきました。1991年の秋に予告編の最後が「ンガググ」から「じゃんけん」へ突然変わったことに衝撃を受けた人たちがパソコン通信を通じてつながり、「サザエさんじゃんけん研究所」を設立し、サザエさんとのじゃんけんの記録を取り続け、データベースを作り始めたのです。
そのデータの数、皆さん、計算してみましょう。サザエさんの放送は1年間に少なくとも50回あります。それが30年間続くと、じゃんけんの回数は1500回に達します。サザエさんとのじゃんけんは現在も続いています。これだけ大量のデータが集まるとグー、チョキ、パーの割合や勝敗の確率など、さまざまな分析と考察ができるようになります。詳しいデータについては「サザエさんじゃんけん研究所」で検索してみましょう。
最後にこの「サザエさんじゃんけん研究所」による分析事例を一つ紹介しておきます。
サザエさんでは毎年、1月、4月、7月、10月の番組編成(クール)に合わせて、その初回でオープニングとエンディングが切り替わっています。『サザエさんじゃんけん白書』(2021年)によると1996年以降、クールの初回は1999年および2007年を除いて、ほとんどチョキを出している。1月の初回は27年連続チョキ、4月の初回は5年連続チョキ、7月の初回は14年連続チョキを出しているそうです。
来週の10月6日(日)は10月の番組編成(クール)の初回にあたります。しかも55周年の節目の回です。これまでの傾向からしてサザエさんは「チョキ」を出してくるのでしょうか。
皆さんも予想してみてください。こうしたところから「探究」は始まります。
校長先生のお話もエンディングです。皆さん、静かに立ちましょう。
それではじゃんけんです。
「最初はグー、じゃんけんぽん!・・・・・・ウフフフフ」
〔典拠〕サザエさんじゃんけん研究所公式ウェブサイト
http://park11.wakwak.com/~hkn/
『サザエさんじゃんけん白書』(2021年12月30日)
http://park11.wakwak.com/~hkn/report.pdf
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ではまた 坂口満宏