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皆さん、あけまして おめでとうございます。
新しい年を迎え、2025年、令和7年となりました。本年もよろしくお願いします。
さて、皆さんはこのお正月をどのように過ごしましたか。
日本では古来より、お正月や節分といった年中行事、卒業式や結婚式など人生の節目にあたる日を「ハレの日」と呼び、特別な日としてきました。そして、それ以外の日常を「ケの日」と呼び、食事にもメリハリをつけることで季節を楽しむことにしてきました。
さっそくですが、ここで皆さんに2つお尋ねしようと思います。いいですか。
第一問:お正月のお膳を飾る料理といえば、何を思い浮かべますか。
お節料理ですか、それともお雑煮ですか。
さらにお節料理とお雑煮を並べたならばどちらが主役だと思いますか。
料理には主役も脇役もないのかもしれませんが、川端誠さんの絵本『十二支のお雑煮』(BL出版、2020年)によれば、お正月の祝いの膳の主役は、お雑煮だそうです。なぜならお雑煮というものは「年神さまをむかえるために、暮れにお供えしたお餅や、地元の食材を鍋で煮込み、神さまと同じものを食べて、一年の力をさずかろうとしたもの」だからだそうです。そして年の始めに作るものという意味においても主役というわけです。
これに対して、お節は年末に作っておく料理です。それはお雑煮をつくる火を大切にするため、ほかのものを煮炊きしなくてもすむようにと、あらかじめこしらえておき、重箱に詰めておくものとして作られてきました。
こうしてお雑煮はお正月料理の主役となってきたのですが、お雑煮は地元の食材を使うことから、地域性がはっきり表れる特別な料理だともいわれています*。
二つ目の質問です、いいですか。
第2問:皆さんが食べたお雑煮は、どのようなお雑煮でしたか。
まずは、お餅の形です。ちょっと思いだしてみましょう。
丸いお餅が入っていましたか、それとも四角いお餅が入っていましたか。
また、そのお餅は焼いてありましたか、煮込んだものでしたか。
つぎはお出汁の違いです。
醤油味のすまし汁でしたか、それとも白みそ仕立てでしたか。
お餅以外の具材には何が入っていましたか
カマボコに鶏肉、ダイコンや里芋、ホウレンソウやニンジンが入っていましたか。また、お椀の上に焼いた魚や大きなエビが盛り付けられていましたか。この他にも具材には、エビ芋やイクラなど、それぞれの地域で縁起の良いものとされているものが使われているようです。
100家族あれば100種類のお雑煮が作られているといっても過言ではありません。附属小学校の児童数は405人ですが、兄弟姉妹で通学している場合もありますので、家族数にするとおよそ380でしょうか。そうすると380種類くらいのお雑煮が作られているといえます。
一度、正確なデータを取って見たいものです。
簡単な調査方法としては、横軸〔醤油味(S)とみそ味(M)〕と縦軸〔丸い餅(○)と四角い餅(□)〕を交差させた「我が家のお雑煮・4象限マトリクス」を作り、4つの領域―①醤油・丸餅(S○)、②みそ・丸餅(M○)、③醤油・角餅(S□)、④味噌・角餅(M□)―に赤丸を付けてもらうというものです。どのような分布になると思いますか、興味は尽きません。
本当にさまざまなお雑煮があります。そして地域性も見られます。全国各地のお雑煮を食べ歩いてきたお雑煮研究家の粕谷浩子さんは、その理由を次のように考察していました。
お雑煮は、お正月という、とびっきりのハレの日に食べる「家庭料理」です。
とびっきりのハレの日→特別な料理。家庭料理→きまりはなく、いいかげんだけれど、それぞれに工夫している。
この「特別だけれど、いいかげん」という二つの要素が、全国各地のバリエーション豊富な「ご当地雑煮」を成り立たせている大きな
理由だと思っています。**
お雑煮は「特別だけれど、いいかげんな家庭料理」なのだそうです。名言ですね。さらに具材についても家族の好き嫌いが影響し、それぞれの家庭でユニークなお雑煮が作られるようになり、微妙に変化しながら受け継がれてきたようです。
これを機に、皆さんもこのお正月にどんなお雑煮を食べたのか、それはどうしてなのか、とおうちの方に聞いてみませんか。家族のルーツや個性が見えてくることでしょう。
今年も「正解があるのか、ないのかわからないけれど、やってみると面白かった」「当たり前だと思っていたけれど、いろいろ調べてみると、そうじゃないということがわかった」ということに挑戦してみましょう。
これで校長先生の3学期始業式の式辞を終わります。
〔参考文献〕*川端誠『十二支のお雑煮』(BL出版、2020年)
**粕谷浩子『地元に行って、作って、食べた 日本全国お雑煮レシピ』(底本・池田書店、2022年、電子書籍版、PHP研究所、2023年)
農林水産省「雑煮文化圏マップ」
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2001/pdf/aff2001_12.pdf
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ではまた
坂口満宏