"

お知らせ

TOPICS

80年前、京都にも空襲がありました ~「馬町空襲」を語り継ぐ~(学校長のブログ)

25.01.21

皆さん、おはようございます。 

先週の1月17日は30年前に阪神・淡路大震災が発生した日でした。震災の経験や教訓を今に伝えるという意味から本校でも避難訓練が行われました。 

また今年はアジア・太平洋戦争が終わってから80年となります。 

80年前の1945年の1月から8月にかけて、日本各地はアメリカ軍による激しい空襲を受けるようになりました。京都市も例外ではありませんでした。 

 

いまから80年前の1945年1月16日午後11時19分、米軍のB29一機が京都に飛来し、馬町周辺に250ポンド爆弾20発を投下。当時の修道国民学校周辺の民家や京都女子専門学校の寮が大きな被害を受けました。正確な死傷者数は不明ですが、京都府の記録によると死者34人、負傷者56人、全焼・全壊31戸、半壊112戸とされています。その後も京都への空襲は続き、3月には右京区西院の春日町、4月には太秦、5月には京都御所、6月には上京区の西陣に爆弾が投下されました。 

 

その間に大阪や神戸が連日のように焼夷弾爆撃に見舞われたことから、次は京都だという焦りもあって、京都市では火災による延焼を防ぐことを目的とした防火帯の設置が決まり、1945年3月に1万5000戸を対象とした建物疎開が始まりました。そして大規模な防火帯として指定されたのが、五条通、御池通、堀川通と京都駅の南側でした。現在、多くの皆さんが利用しているプリンセスラインバスの乗り場がある八条通の道幅が広いのは、戦争後に建物疎開で作られた空き地を利用し、道幅約36mの道路に整備されたからでした。 

 

さて、話を馬町空襲に戻します。馬町空襲の歴史を風化させてはならないとして、2012年1月、修道自治連合会協賛のもと、馬町空襲を語り継ぐ会の母体が組織され、空襲の碑建立事業が始まりました。そして2014年1月16日、京都市立東山総合支援学校の敷地内に「馬町空襲の地」という碑が建立されました。 

 

それから2年後、馬町空襲で被災した現場の様子を撮影した村中秀光さんの写真12枚が見つかりました。この村中さんの写真とすでに知られていた長谷川哲也さんの写真14枚をもとに着弾地点を推定し、学生たちと一緒に作成したのが図1の「馬町空襲被害地図」です。1945年当時は未だ附属小学校は存在していませんが、大きく書き込んでおきましたので、現在の附小の近辺にどれほど多くの爆弾が投下されたかがわかると思います。 

 

写真1は、被弾した京都女子専門学校の第三小松寮です(地図の)。寄宿生120名のうち5名が生き埋めになりしましたが、幸いなことに死者はでなかったとのことです。建物が立つのり面の石垣、どこかで見たことはありませんか。現在もその一部を見ることができます。 

 

写真2は、爆撃を受けた京都幼稚園の職員室(地図の)です。その当時、京都幼稚園は現在の京都女子大学東山寮のところにありました。壁は吹き飛び、外の電柱や民家が透けて見えます。馬町を襲った爆弾は焼夷弾ではなく、爆風で建物を破壊するそれであったことがわかります。当初は、どこの建物を撮影したものか分かりませんでしたが、爆撃される前の京都幼稚園の写真と見比べることができ、大きな窓枠の形が一致していることから、特定することができました。 

 

「馬町空襲を語り継ぐ会」の活動は、2018年1月の式典をもって終わりましたが、空襲による被害を物語る写真や資料は下記のウエッブサイトに収められていますので、閲覧することができます。 

   https://www.vinaccia.jp/umamachi/index.html 

 

かつて身近なところに「戦争」があったこと――そのことを一次資料は力強く語っています。 

 

このあと、皆さんに『伝えたい記憶-写真に見る 京都・馬町空襲被害地図』というパンフレットを差し上げます。7年前に校長先生が学生たちと作った大人向けのものですから、難しい漢字もたくさんあります。まずはじっくり写真を見てください。80年前の1月に京都にも空襲があったことが浮かび上がってくると思います。そして皆さんの中から「今度は自分たちで子ども向けの馬町空襲を伝えるパンフレットを作ってみたい!」という声が上がるのを期待しています。 

 

これで校長先生のお話を終わります。 

 

〔参考文献〕伊藤忠夫『京都空襲-8888フライト― 米軍資料からみた記録』(京都新聞出版センター、2021年) 

                      川口朋子『建物疎開と都市防空―「非戦災都市」京都の戦中・戦後』(京都大学学術出版会、2014年) 

—————————— 

ではまた 

坂口満宏

ホームへ戻る