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2025年6月 『附小だより』_子どもたちと制服のある風景

25.06.03

『附小だより』6月号に掲載した「巻頭言」の一部を紹介します。

 

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今年の附属小学校では、6月16日に夏服への衣替えとなります。

 

附小の制服は、1957年の創立当初から着用されており、学習院初等科の制服を参考にして作られた伝統あるデザインです。冬服と夏服、男女それぞれの特徴をまとめておきます。

 

冬の制服

冬服の男子の制服は、紺色のサージ生地で仕立てられた詰襟型の上着です。上着の縁には、黒っぽい毛羽立ちのある布(毛べり)で縁取りがされており、クラシックな印象を与えます。前合わせはボタンではなくファスナー式で、中にはポロシャツを着るスタイルです。ズボンは半ズボンタイプ(今年度からはハーフパンツ型もあります)で、帽子は紺のラシャで、「黒ジャバラ巻」と規定されています。

 

女子の冬服は、紺のサージ生地を使ったセーラー服で、襟と袖に白い三本線が入っています。白いスカーフを合わせ、スカートは16本のひだが入ったプリーツスカートです。帽子は、高級感のあるドスキン生地で作られた、丸みのあるメトロ型帽子が指定されています。

 

夏の制服

夏服では、男子は白いブロード生地のシャツ(半袖または長袖)に、紺色のネクタイと附小マーク入りのネクタイピンを着けます。ズボンは、紺色のトロピカル生地の半ズボン(ハーフパンツ)になります。

 

女子の夏服は、白いブロード生地のセーラー服(半袖または長袖)で、襟と半袖にはグレーの三本線が入っています。スカーフは紺色です。スカートは紺のトロピカル生地を使ったボックスプリーツタイプです。

 

夏服では、男女ともに、あご紐(タッサー)付きのサックスブルー(グレーがかった青色)メトロ型の帽子をかぶり、白いソックスを着用します。

 

ちなみに、女子のセーラー服は、以前は伝統的なかぶり型でしたが、着やすさを考慮して、20年ほど前に前ファスナー型に変更されたようです。また、胸元には、襟にボタンで留める胸当て布が取り付けられています。

 

このようにところどころ改良が加えられた部分もありますが、附小の制服は創立当初から60年以上にわたり、ほぼ同じデザインが使われ続けてきました。

 

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セーラー服は、日本の学校で女子の制服として長く用いられてきた伝統的な衣装です。その起源は1920年代に名古屋の先進的な私立女学校がファッション性と教育的意義を重視して採用したことにあります。その後セーラー服は、清潔感と規律を象徴する制服とみなされ、旧制の高等女学校に広まりました。

 

1950年代になると各地の私立小学校でセーラー服の採用が進みましたが、その背景には、制服によって児童の一体感や規律を育てたいという教育的意図があったようです。特に女子用のセーラー服は、可憐さと品位を兼ね備え、子どもらしさを保ちつつ整った印象を与えることが期待されました。また、飾り気の少ないシンプルなデザインは経済的で洗濯や動作にも適しており、実用面でも優れていました。

 

セーラー服には季節ごとに冬服と夏服のバリエーションがあり、また、襟のラインの色と形で学校ごとの個性が表現され、制服が学校文化の一部として位置づけられています。特に後ろ襟(セーラーカラー)には、制服全体の印象を大きく左右する象徴的なデザイン要素があり、学校のアイデンティティを示す役割も担っています。もともとは水兵の軍服に由来したものですが、髪をまとめやすくする、防寒性を高めるといった実用性と機能性が認められ、取り入れられていきました。そして多くの学校で女子児童の制服に採用されるようになると、その端正なデザインが視覚的な魅力を持つようになりました。

 

また、ネクタイやスカーフは、制服にアクセントと品位を添える大切な要素であり、その形や色合いによって学校の個性が表れます。セーラー服のスカーフについては、附小では結ぶ手間を省くために、胸元のスカーフ留めに通して垂らすスタイルを採用しています。男子のネクタイも同様で、あらかじめ結ばれた状態になっているネクタイを紐で首に巻き、吊り下げる形式となっています。

 

制服は、子どもたちがこの学校の一員であることを示す、大切な服装です。毎朝、制服をきちんと着て登校すること、すなわち制服のある風景は、周囲に良い印象を与えるだけでなく、自分の行動に責任をもつ意識を育む第一歩となります。また、仲間と同じ制服を身に着けることで、協調性や思いやりの心も育っていきます。

 

子どもたち一人ひとりが「学校の顔」であることを意識し、節度ある姿勢で学校生活に取り組めるよう、ご家庭におかれましても制服の着こなしについてお声がけいただき、子どもたちが自信と誇りをもって日々を過ごせるよう、ご協力をお願いいたします。

 

 

〔参考文献〕『京都女子学園八十年史』(京都女子学園、1980年)

  刑部芳則『セーラー服の誕生-女子校制服の近代史』( 法政大学出版局、2021年)

 

 

 

 

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