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『附小だより』12月号「巻頭言」 アラモアナから広がる学びの道――「なぜ?どうして?」を育てるハワイ研修記 (学校長のブログ)

25.12.02

 シンガポール、台湾に続く第三の海外研修先を開発するため、11月下旬、T先生とともにハワイを訪れました。私にとってハワイは、海を渡った日本人移民研究の原点であり、Ala Moana(アラモアナ)――海と人とモノをつなぐ道の大切さを学んだ土地です。今回の下見でも、現地に立つからこそ生まれる「なぜ?」「どうして?」という探究の芽にいくつも出会いました。その一端をご紹介します。皆さんもぜひ、一緒に考えてみてください。 

 

11月某日(金) 出発 ― 日付変更線を越えて 

 関西空港からホノルルまで、約8時間のフライトです。「日付変更線ってなんだろう?」という素朴な疑問を抱いたまま、気がつくとハワイに到着していました。 

 空港は2017年から「ダニエル・K・イノウエ国際空港」という名前になっています。「ダニエル・K・イノウエ」とは、どんな人物なのでしょう。ここにも、ハワイと日本の歴史が隠れています。 

 入国審査場の壁には、星条旗と並んでハワイの州旗が掲げられていました。よく見ると、ユニオンジャックが描かれています。なぜハワイの州旗にイギリスの国旗が――? 海の歴史を考える入口となる光景でした。 

 宿泊先はアラモアナ・ホテル。カメハメハ大王像やイオラニ宮殿のあるダウンタウンとワイキキの中間に位置し、アラモアナ・ショッピングセンターと直結する便利な場所です。 

 

11月某日(土) レアヒで見つけた問い 

 T先生の提案でダイヤモンドヘッドへ。標高232m、阿弥陀ヶ峰より少し高い、火山活動で噴出した砕屑物が火口の周囲に積もってできた丘です。海岸からも美しい稜線がよく見えます。ハワイ語では「レアヒ(マグロの額)」というそうですが、なぜか「ダイヤモンドヘッド」と呼ばれるようになりました。現地で風や海を感じながら歩くと、その疑問がよりリアルに響きます。 

 下山後は、カピオラニ公園に行き、地元のお店のサンドイッチを木陰で広げてのランチです。T先生は梅シソ風味のジャムにすっかり夢中になっていました。 

 午後はモイリイリ地区へ。日本人墓地に入ると、お年寄りの方から日本語で声をかけられ、驚きと同時に移民の歴史が急に近く感じられました。墓碑には広島、山口、福岡、熊本、沖縄といった地名が刻まれ、すぐ近くにはモイリイリ本願寺や厳島神社の鳥居、ハワイ日本文化センターが並びます。 

 さらに歩くと、高知城そっくりのマキキ聖城キリスト教会が現れます。35年前の夏、この教会の地下室に眠っていた史料の整理に没頭した日々を思い出しました。「なぜキリスト教会が日本の城の姿をしているのか?」――ハワイの多文化性を象徴する問いです。 

 

11月某日(日) 博物館から見えるハワイの広がり 

 当初予定していたハワイ別院の日曜礼拝(日本語の部)が大掃除で休みとなったため、ビショップ・ミュージアムへ行きました。ハワイ最大の博物館で、ポリネシア文化の考古資料、航海用のカヌー、ハワイ王国の歴史を伝える品々が展示されています。サイエンス・アドベンチャー・センターでは火山列島の成り立ちを学び、ハワイの島々の背景が立体的に見えてきました。 

 その後、T先生の希望でワイキキ・ビーチへ。海で遊ぶ人々に混じり、場違いな服装のおじさん二人はサンドイッチを手に、しばし海の日差しを浴びていました。 

 そして私がお勧めしたいのがアラモアナ・ビーチパークです。市民の憩いの場で、ホテルから歩いて10分ほど。観光地の喧騒から少し離れた海辺で、夕陽が水平線に静かに沈んでいく光景は、何度見ても心に残ります。 

 

11月某日(月) ハワイと京女をつなぐ場所へ 

 最終日はタクシーで本派本願寺派のハワイ別院へ。10年ぶりの訪問です。1918年建立の建物は日本の寺院とは大きく異なっており、初めて見る人は驚くかもしれません。当時の開教総長は今村惠猛で、京女の設立に尽力した甲斐和里子の姪の夫にあたります。京女とハワイは、想像以上に深い縁で結ばれています(詳しくは拙稿「京都女子高等専門学校で学んだハワイの日系人」参照)。 

 向かいにある本願寺ミッションスクールも見学しました。プリスクールから8年生まで約300名が学ぶ私立学校です。少人数・ICT活用が進んでおり、子どもたちがのびのびと活動していました。今回の訪問を機に、本校児童との交流の可能性を具体的に検討したいと考えています。 

 

おわりに ― 海を渡る学びの意味 

 私が企画する海外研修ではいずれも、「海を渡った日本人の歴史」を軸に、宗教施設や教育施設を訪れ、現地の人びととの出会いから学びを深めることを重視しています。 

 異なる文化の中に身を置くと、身近にある世界も違って見えてきます。ふだんは通り過ぎてしまう光景が、急に問いへと変わっていきます――その瞬間こそが、海を渡る学びの本質ではないでしょうか。子どもたちには、この「なぜ?」「どうして?」という小さな芽を何よりも大切にし、探究心と国際的な視野をもつ人へと育っていってほしいと願っています。 

 今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。 

 Mahalo(マハロ)! 

 

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ではまた 

坂口満宏 

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