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日ごとに春の兆しが感じられ、ここ東山の山並みも、やわらかな色に包まれる季節となりました。
本日ここに、第64回卒業証書授与式を挙行できますことを、大変うれしく思います。
大谷範子名誉校長様、芝原玄記学園長様をはじめ、ご来賓の皆様、そして保護者の皆様のご臨席を賜りましたこと、心より御礼申し上げます。
さて、本校を巣立つ76名の皆さん。
ご卒業、おめでとうございます。
皆さんに今手渡された卒業証書は、この6年間、皆さん一人ひとりが、この附属小学校で懸命に学び、成長してきた証です。どうぞいつまでも大切にしてください。
ここで少し、皆さんの6年間を振り返ってみましょう。
入学式の体育館で、少し距離をとって座っていた、小さな皆さん。
田んぼでの稲刈りや芋ほりに夢中になった日。
鳥部の森を元気に歩いた遠足。
仲間と声をそろえて挑んだ学習発表会や林間学校。
そして高学年になると、学校の顔として、運動会や児童会、音楽会で力いっぱい活躍する姿を見せてくれました。
一つひとつの場面に、皆さんの笑顔と成長が確かに刻まれています。
私が校長として着任してからの2年間も、皆さんと同じ時間と空間を共に過ごしてきました。
その中で、頼もしさを感じることもあれば、時には皆さんの元気いっぱいのやんちゃぶりに、おやおやと思ったこともありました。
さて皆さん、今一度、小学校に入学した6年前、2020年の春を思い出してみてください。
本来なら、期待に胸をふくらませて登校するはずの春でした。
しかし、新型コロナウイルスの影響で、学校に来ることさえ叶いませんでした。
友だちの顔を見ることもできず、静かな家の中で過ごした日々。
皆さんは、「当たり前の日常」が決して当たり前ではないこと、
そして、誰かと会えることがどれほど大切なことかを、身をもって知った世代です。
そんな皆さんに、今日、私から贈りたい言葉があります。
卒業アルバムの寄せ書きの真ん中に、私が筆で書いた言葉です。
「値遇(ちぐう)の喜び」
「値遇」の「値」は、値打ち、つまり価値があるという意味。
「遇」は、たまたま、思いがけず出会うという意味です。
つまり「値遇」とは、出会えたことそのものに、一生ものの価値があるということです。人生は、出会いによって形づくられていきます。
思い返してみてください。
六年前、初めて教室に入ったときのことを。
たまたま名簿の順番が前後だった子。
たまたま席が隣だった子。
たまたま通学路が同じだった子。
もし名簿の順番が一つ違っていたら、
今の親友とは、これほど深い仲になっていなかったかもしれません。
そんな小さな偶然が、6年という時間の中で、かけがえのない宝物になりました。
この学級、この学年という集団も同じです。
例えるなら、皆さんは一枚の大きなジグソーパズルのような存在です。
誰一人として同じ形のピースはありません。
一人ひとりが違う形、違う色を持っています。
そして、一人でも欠けると、この学年という絵は完成しないのです。
音楽会で歌ったRADWIMPSの「正解」。
あのとき、誰か一人でも欠けていたら、
あの学年の空気感、あの震えるような歌声は生まれなかったでしょう。
世界中に何千万人もの小学生がいる中で、この場所に、この76名が集まり、6年間を共に過ごした確率。それは、計算することもできないほどの、大きな奇跡と言ってよいでしょう。
あの日、静かな家の中で「誰かに会いたい」と願っていた皆さんが、今日こうして、最高の仲間と肩を並べ、卒業の日を迎えている。これこそが、何にも代えがたい「値遇の喜び」なのです。
これから先、皆さんはそれぞれ違う道を歩み、新しい世界へと進んでいきます。
その中では、励まし合う友だちや、切磋琢磨するライバルや、人生を支えてくれる大切な人との出会いがあるでしょう。
どうか、これから出会う一つひとつのご縁を、ただの「たまたま」で終わらせず、一生ものの価値へと育てていってください。
この学び舎で、この仲間と出会えた奇跡を胸に、自信を持って新しい世界へ歩み出してください。
そして、自ら問い、対話しながら、価値ある出会いを紡いでいってください。皆さんのこれからの人生が、かけがえのない「値遇」に満ちた豊かな道となることを、心から願っています。
最後になりましたが、保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。
卒業証書を手にするお子様の姿に、感慨もひとしおのことと存じます。
日々の小さな成長を見守り、ときに励まし、ときに背中を押し続けてこられた保護者の皆様の温かなまなざしが、子どもたちの大きな力となり、今日の日を支えてくださいました。
私たち教職員一同も、お子様の健やかな成長を願い、教育活動に努めてまいりました。
行き届かぬ点も多々あったことと存じますが、皆様の温かいご理解とご協力を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。
ありがとうございました。
以上をもちまして、校長としての式辞といたします。
2026年3月16日
京都女子大学附属小学校
校長 坂口満宏